南房総市立富山学園 Tomiyama Elementary and Junior High School

校内研修

令和7年度 研究計画の概要

1 研究主題

「自分の思いや考えを表現できる子の育成」 ~対話のサイクルを通して~

2 研究主題について

(1)今日的な教育課題から

 近年の技術革新により、社会が急速に変化している。グローバル化が進み、世界のどこにいても誰とでもつながることのできる社会となっている。この先、人工知能のさらなる進歩により、日本の労働人口の約半数がなくなっていくと予測され、雇用の在り方や学校で知識を習得することの意味にも変化をもたらすと予測が示されている。一方、子どもたちは未曽有の災害や、未経験の感染症に対峙し、正解が見 えない、環境の変化に対応しながら生きていくことも求められている。つまり、これから子どもたちが生きていく社会は、大人である私たちが経験したことのない前例のない社会になると考えられる。
 こうした未来を切り拓いていくために、新学習指導要領では、「子どもたちが様々な変化に向き合い、他者と協働して課題解決していくこと」の必要性が述べられている。そのためには、いつ、どのような状況においても、自ら学び、自ら考える力を育むこと、新しいことへ主体的・意欲的に取り組んでいく力が必要となっている。また、仲間と協働しその状況においての「最適解」を導き出していく力の育成が、学校教育において求められている。
 だからこそ「対話」をとおして自分の考えを伝え合い、考えを交流し合いながらさらに新たな考えを形成していけるような授業づくりを目指していくことが欠かせないと考えた


(2)南房総市の取組から

 南房総市では、「0歳から15歳・保幼小中一貫教育の推進」「子どもが地域に誇りと強い思いをもち、自己の可能性を伸ばす特色ある教育の推進」を教育目標として掲げている。本校でも富山学園として、同じ敷地内で0歳から15歳までの幅広い年代の子どもたちが、共に学校生活を送っている。子どもが「地域を学ぶ、地域に学ぶ、地域が学ぶ」ことをとおして富山学を学び、故郷への誇りと強い思いを育んでいく。富山学を深めていくためには、自然体験活動をとおして地域の方や世代の違う方々に富山のことについて「聞き」、聞いたことについて「考え」、その考えについて「話す(伝える)」、そして話したことを「振り返る」という対話的な学びが必要である。こうした対話的な学びこそが、社会へ出た時に必要になってくるのではないだろうか。
 そこで、特に子ども園(幼)~中学部では6歳から15歳までを見渡しながら3つのブロック( ①幼・1・2・3年  ②4・5・6・7年  ③8・9年 )に分け、それぞれのブロックごとに対話的な学びで目指す姿をもち、積み重ねていくことで、生きる力と生涯にわたって学び続ける、意欲をもった学びの実現につながると考えた。


(3)本校の実態から

 まず、令和6年度の実態として、中学部の実力テストの結果から正しく題意を読み取れずに答えたり、国語の記述問題では、諦めてしまい空欄で提出したりする生徒が目立つ。このことから、出題の題意を正しく理解できない、また、読み取った内容を自分なりに解釈して、言葉で表現することを苦手とする生徒が多いことが推察される。また、小学部の学力テストの結果から、題意を正しく読み取れず主観を入れたため不正解となっていたり、聞き取りや読解問題で、話し手や登場人物の意図を読み取れなかったりした児童が目立った。相手の意図を正しくとらえることが、苦手とする児童が多いと推察される。
 次に、昨年度の小学部・中学部共に一人一授業を実施し、対話的な学びに迫れるような実践を行った。年度末の研修の振り返りから、以下のような意見があった。
 
 ・自分の思いや考えを表現する力を育成していくことは、富山の子たちには必要。
 ・授業の中で、対話の場面が足りない。
 ・仲間に伝える、聞く、取り入れる、まとめる力を付けさせたい。
 ・昨年度も対話を研究のテーマとしてきた。効果を感じてきているので、このまま児童の変容を追いたい。など
 
 以上から、今年度も継続し「対話」を通して、相手の思いや意図を正しく受け取りながら、自己の思いや考えを表現できる児童・生徒の育成を目指したいと考える。
 そこで、今年度も問題解決に向けて多様な視点で話し合ったり、根拠をもって話し合ったりして、話し合いを広げ深めていく授業改善を行っていく。授業改善の視点の1点目に、「話し合いたい」「問題解決したい」と思うような学習問題・課題の設定という教師側の授業デザインである。2点目に、友達の思いをくみ取りながら聴き、自分の考えと照らし合わせながら新たに考えを再構築し、自分の考えに適切な言葉を選んで相手に伝えるという「対話的な授業」を日々積み重ねていくことが必要である。そうすることで、児童・生徒の「対話力」や「表現力」が培われていくのではないかと考えた。


(4)本校の学校教育目標から

 新学習指導要領、南房総市教育目標を受け、学校教育目標や目指す子ども像を以下の様に設定している。
(学校教育目標)豊かで逞しい心をもった子どもの育成
~人間性を育む=「情操」・「意思」を育てる~
(目指す子ども像)夢や志を持ち、自分を見つめることのできる子ども
~夢や志をもち、自分の見つめることのできる子ども~
 
 本校では、昨年度に引き続き目指す子ども像として「自分を見つめることのできる子ども」の育成を目指している。自分を見つめるとは、省察することであり、自分のことを省みて考えをめぐらせていくことである。それは決して一人でできることではなく、他者(友達・先生・家族・地域の方など)と考えを交流し合う活動を通し、自己と他者を比較した時、過去の自分と比較した時、またそこから新たな考えに気付いた時、改めて自分を見つめることができるのではないだろうか。そのためにも、教育活動全体を通して、他者と主体的に関わりをもつために「対話」する経験を積み重ねていくことが必要である。


研究推進委員会

校長・教頭(2)・教務(2)・研究主任(2)・小学部低中高ブロック代表・中学部各学年代表